Brewing Notes

海外のサイトから仕入れたBrewingに関する情報を頑張って和訳していきます。和訳の要望があれば気軽にご連絡ください。お待ちしています。

A Novel Approach to DMS Reduction, part1&part2 -DMSの減少に有効な手段-

https://beerandbrewing.com/a-novel-approach-to-dms-reduction-part-1/

https://beerandbrewing.com/a-novel-approach-to-dms-reduction-part-2/

上の2記事を和訳しました。

 

ビールに含まれる不快な香りの原因の一つに、DMS(硫化ジメチル)が挙げられます。"熱したトウモロコシ"と例えられるDMSですが、発生を防ぐために様々な試みが行われてきました。上の記事では、今までにない"DMSレスト"という手法を用いてDMSの発生を抑える実験が紹介されています。ただし、記事中の画像はいずれも閲覧できませんでした。Craft Beer&Brewingの購読者限定なのでしょう。

 

記事を要約すると、

①  DMSはs-メチルメチ二オン(SMM)から生じる硫黄化合物で、s-メチルメチニオンはDMS precursorとも呼ばれる。S-メチルメチ二オンは大麦が出芽するときに発生するため、全てのモルトに少なからず含まれている。

②  DMSは49℃あたり、もしくはもう少し高い温度で発生し、74℃以上に達するまで揮発しない

③  長時間ボイルするとDMSを揮発させることができる反面、加熱によるメイラード反応によってビールの色は濃くなる。

④  DMSレストはより長時間行うほどDMSの減少に効果的

⑤  ほどほどにDMSレストして75分以上ボイルするのが安心。ただし極端に長時間のボイルはアセドアルデヒドを発生させ、極端に短時間のボイルはチルヘイズを誘発する。

 

決して完璧な翻訳とはいえないのでご承知ください。

 

-----------------------------------以下和訳↓--------------------- 

 

 

100%オールグレインでクリアなビールを作りたいなら、DMSが関わってくることを留意すべきだ。ホームブリューのエキスパートであるTaylor Caron氏はDMSレストという手法を用いている。

 

ビールを悪くする要因について、DMS(dimethyl sulfide)や同じ

Dワードであるダイアセチル(diacethyl)について耳にすることがあるだろう。発酵中に生成されるダイアセチルと異なり、DMSの発生と揮発はイーストが麦汁に触れる前から起こっている。

それらの香りを体感したことのない人に対して、DMSは加熱したコーンの香りと表現されるが、オリーブの缶詰やトマトペーストの缶詰とも感じるだろう。これまでに強力なDMSの香りを体感したことがあれば、商業製品・ホームブリュー問わず数多くのビールにDMSが含まれていることに気づくだろう。

DMSはs-メチルメチ二オン(SMM)から生じる硫黄化合物で、s-メチルメチニオンはDMS precursorとも呼ばれる。S-メチルメチ二オンは大麦が出芽するときに発生するため、全てのモルトに少なからず含まれている。しかし、殆どのs- メチルメチニオンはモルティングの際にDMSに分解されてから焙煎工程で揮発する。つまり、焙煎済みのモルトは非焙煎のモルトに比べてS-メチルメチニオンレベルが低くなる。反対にピルスナーモルトのような色の淡いモルトにはかなりのs-メチルメチニオンが残っており、ボイルなどの加熱さによりDMSに変化し現れてしまう。この仕組みが100%オールグレインのときDMSフリーで色が淡いビールを作るのを難しくしている。(コーンシュガーや米を使うことでS-メチルメチニオン/DMSの発生を抑えることができる)

この記事では、DMSの対処に有効な試みを新しいアプローチで検証する。

 

DMSに着目する

過去の研究によるとDMSは49℃あたり、もしくはもう少し高い温度で発生し、74℃以上に達するまで揮発しないと提言されている。また一般的には、DMSを排除するには75~90分の十分な時間、蒸気解放状態でボイルし38℃以下まで急冷することが有効と言われている。普通であればこれでDMSフリーのビールができるのだが、我々ホームブリュワーは長時間直火で加熱することによる麦汁の濃色化も考慮しなくてはならない(カラメル化)。ここで一つの疑問が生じる。ボイル前に全てのS-メチルメチニオンをDMSに変化させることで、麦汁の淡い色を維持したままDMSフリーのビールを作れないだろうか?

これを調べるにあたって、私はDMSをわざと強くしたビールを6つ作ってみた。それぞれ異なるメーカーのピルスナーモルトを使用することで、最もDMSの強いモルトを見つけるのが目的だ。New Belgium Brewing’s LabのDanaとJeffが親切にも私の検証に興味を示してくれ、彼らのガスクロマトグラフィを使用することができた。結果の表1(表がどこにもない)の通り、今回の検証は非の打ち所のない成功を収めた。DMSの試飲の許容値が35 ppbであると考えた場合、すべてのビールにおいて非常に高い値となった。

さらに興味深いのは、Weyermann社のExtra Pale Premium Pilsner maltは最も高いDMS値を示すと同時に、Lovibond度1.2~1.4と最も淡い色だったということだ。これはDMSに変化していないSMMが未だ含まれていることも表している。一方で、床に敷き詰められて発芽した麦芽がRahr社のモルトに比べてかなり高いDMS値を示した。Rahr社のモルトが焙煎を経ているにも関わらずこのような結果になったのは、おそらく各社特有の発芽工程の違いによるものと思われる。もしくは単純に今回使用したモルトの個体差なのか、詳しくは分からなかった。

 

DMSの発生と揮発

最もDMS値の高いモルトを選出したところで、私は次の検証に取り掛かった。DMSをボイル前に最大限発生させておくことと、全てのDMSを揮発させるのに必要なボイル時間の測定を試みることだ。ピルスナーモルトを100%使用してマッシングを行い、通常のロータリングの後、麦汁を71℃〜82℃で放置した。これは一般に言われるDMSレストである。

40分のDMSレストのあと、私は麦汁の1/4を20分間ボイルし、銅製のチラーで30分掛けて38℃まで冷却した。また新たに麦汁を1/4ずつ20分から100分まで段階的に分け、それぞれ20分ボイルし30分冷却した(DMSレスト時間による効果の違いを検証している)。ちなみに、30分の冷却は通常のビール作りでは遅すぎるので注意してほしい。今回の狙いはDMSレストの時間に違いによる効果を見ることを目的に、ゆっくり冷却することで測定可能なDMS量をわざと残すことにある。

結果としては、どのビールもボイル時間が短かったため非常に淡い色をしているが、果たして飲めるような出来だろうか?表2が結果を示す通り、DMSレストの時間が長ければ長いほど完成したビール中のDMSは少なくなった。ほとんどの試飲者は微量のDMSであっても判別してしまうが、それらに差異は感じられず、驚くべき結果となった。

 

最後の検証はもちろん、ロータリングと90分のボイルを行なった従来のビールと、100分間のDMSレストを行ってから20分のボイルしできる限り高速で冷却したビールを口当たりと色で比較することだ。

私の予想では、直火を使用することにより加熱された麦汁が最後に残されたDMSの発生を促し、最小限のボイルで揮発させることができるはずだ。さらに全てのs-メチルメチニオンをDMSに変化させるのに必要な時間を調査すれば、”全ての“DMSを揮発するのに最小限必要なボイル時間がどれだけなのか割り出せるだろう。これが実現すれば、冷却が遅かったことによる問題(=DMSの発生)を大幅に軽減できる。

幸運なことに、私たちには未だ研究すべきことがたくさん残されている。

 

Part2

前回の記事では、DMSはどのようにして発生するか、どのようにして揮発するか、そして色の淡いビールからDMSを取り除く新しい試みについて着目した。最も強くDMSを発するモルトを明確にし、そのモルトのみを使用して麦汁を作り発酵を行った。ボイル前の時間を増やしDMSを最大限発生させることで短いボイル時間でDMSを揮発させ、従来の70~90分間のボイルによる麦汁の色の変化を防ぐことが期待できる

 

The TEST(part1のおさらい)

上記の情報を武器に、最後の検証を行う。麦汁の半分を74℃で100分間のDMSレストを行い、20分ボイルする。もう半分は通常通り75分間ボイルする。75分間ボイルする麦汁はホップの効率などを保つために、20分ボイルした麦汁の比重に合わせて希釈した。どちらの麦汁もホップの投入は残り20分時点で1度だけ行った。またどちらもボイル後の冷却は出来る限り素早く行い、DMSが最小になるよう努めた。発酵は10℃で7日間行った。

 

検証結果

注意として、今回醸造した2つのABV6.2% Blonde lagerはテイスティングするには非常に早く、両方とも明らかにアセドアルデヒドを含んだ”若ビール”だ。またどちらも極端に明るい色ではなかった。とはいえ、両者を比較するのは大変興味深い。特に、短時間ボイルしたほうが早くクリアになり(沈殿が早い?) 完成に早く近づくものと思われたが、チルヘイズに問題があったようだ。長時間ボイルしたほうは強いアセドアルデヒドを含んでおり、数人の試飲者がその粗さに不快さを感じていた。3~5週間後の適切なラガーリング後にどうなっているかはわからないが、2つのビールを試飲した人たちは、アセドアルデヒドを除けば、どちらのビールも非常に低いDMSレベルか、長時間ボイルしたほうが少し悪いと感じたようだ。

2つのビールを作る状況下でもっとも大きな違いの一つは、ホップを投入するまでに生じたホットブレイクの時間の長さだ。長時間のボイルによるホットブレイクの長さがアセドアルデヒドの増加、短時間のボイルがチルヘイズに繋がったのだろうか。また何故、短時間ボイルしたビールのほうが沈殿が早かったのだろうか。私の考えでは、場合によって、より早い凝集はアセドアルデヒドの増加につながるはずである。写真から明らかなように、両方のビールはともにABV 6%程で、色に影響する副材料を使っていないにもかかわらず、非常に淡い色になった。検証の本来の目的は”長時間のボイルによる麦汁の濃色化を回避する方法”であったことを考えると、両者の色の違いはほんの少しだけと認めざるを得ないが、同じベースモルトでも完成したビールに僅かなLovibond度の違いを生むことが明らかになった。DMSの扱いの難しさゆえに多くの醸造家たちが色の極端に淡い麦芽を避けているが、今回の結果を見れば、DMSレストと75分間のボイル・急冷の組み合わせによってピルスナー、へレス、ケルシュやその他のスタイルに向いた素晴らしく淡い色のウォートを作ることができると確信している。そしてExtra-pale Pilsner malt は楽しく、まさにパン生地のような香りを持っている。使ってみる価値はあるはずだ。